所有物件の「付加価値」を高めるリフォーム
賃貸経営での「リフォーム」とは
「リフォーム」とひと口に言っても、賃貸経営ではいくつかの種類があります。まず、借主が退去するごとに必ず行う「原状回復工事」。長期修繕計画に基づく「大規模修繕」。そしてこれ以外のリフォーム工事です。
これらはすべて、堅調な賃貸経営のための「入居者の獲得(空室回避)」「物件価値の維持(向上)」を目的としています。しかし、施工時期や施工規模は違いますし、それぞれに意味合いや効果が異なる部分もあります。オーナーとしてはその部分を明確にして、はっきりとした意図をもって施工することが重要です。
「原状回復工事」は、言葉の通り、住戸内を元の状態に戻すために必要な部分を修繕する施工です。「大規模修繕」は、長い年月を経ることで建物そのものの老朽化した部分や、不具合箇所を一気に直す大掛かりな修繕工事です。そしてもう一つが、住居を時代のニーズに合わせて改修したり、最新の便利な機能・設備を導入したりするための施工です。
三つ目の、住居に手を加えて新たな価値を生み出すための施工は、「リノベーション」と呼ばれることもあります。原状回復以上の施工範囲となりますし、大規模修繕の主な施工対象である建物外観や構造部分の修繕からもやや外れますから、施工時期などに迷う場合も多いようです。次項以降は、この付加価値のためのリフォーム(リノベーション)について、具体的な内容を見ていきます。
付加価値を高めるリフォームについて
物件の付加価値を高めるリフォームは、いつ行えばいいでしょうか。借主が居住中には基本的に住戸内の施工はできませんから、リフォームタイミングとしては契約が終了し借主が退去した後が最適です。このときは、必ず原状回復工事を行いますから、それに追加施工する形になります。
借主からの退去の申し入れは解約の1カ月以上前なので、その時点で原状回復工事にプラスしてどのような付加価値を付けるかをできるだけ早く決めて、見積りを取るなど準備を進めていく必要があります。具体的には、給湯設備が旧式ならば多機能の最新式に交換する、部屋が和室やクッションフロアなど、やや時代のニーズに合わないようならフローリングといった人気の高い仕様に変えるなどが考えられます。セキュリティー面の設備追加や収納の増設などもあるでしょう。
しかし、施工箇所が増えれば当然その分工期は長くなります。それは空室期間が長くなるということなので、できるだけ工期を効率よく短縮するためには、やはり事前の準備・手配が重要になってきます。ですから、思い付きで設備を追加したり交換したりするのではなく、常に世の中の住まいに対する要望や人気の商品などにアンテナを張って、情報を入手しておくことが必要です。当然施工費用も上積みされますから、付加価値リフォームのための費用を日頃から準備しておくことも必要です。
お金がかかり多少空室期間が増しても、次の入居者候補の求める住居を提示できれば、結果的に経年による家賃の引き下げをせずに済んだり、快適な住居に長く住み続けてもらえたりというメリットが得られる可能性が高くなります。
例え物件管理を管理会社に業務委託していたとしても、自分の所有物件の価値を維持するためには、管理会社に任せきりにせずに、施工の必要性はオーナー自身が判断していくことが大切です。
リフォームを行う場合の注意点
やはり一番気を付ける点は、リフォームの施工期間をできるだけ短くするということです。工事中の空室による収入減を可能な限り抑えるためです。それには事前の準備が大事だということは既にお伝えしました。ではどのようにすれば、適正な工期で効率的にリフォームが行えるのでしょうか。
まず信頼できる施工会社を見つけ、発注することが重要です。間に管理会社が入る場合もありますが、その際でも複数社から相見積もりを取ってもらい、発注先を検討・選択できるようにしましょう。管理会社が提携している施工会社もあるでしょうが、その会社の施工費用が適正か工事を任せられるかを知るためにも、ぜひ複数社から同じ内容で見積もりと施工スケジュールの概算を取得することをおすすめします。
また、リフォーム工事に取り掛かってみたら水漏れが見つかるなど、想定外のことが起きることがあります。ですから、予算いっぱいに工事内容を詰め込むことはしない方がいいでしょう。想定外の追加工事などに備えて、資金には余裕を持たせておくと安心です。
一方で、不動産の管理会社や仲介会社は、消費者のニーズを受け止めながら営業しているわけですから、常に新たな情報をストックしています。そのあたりは柔軟に意見を聞いて、リフォーム内容を含めた賃貸経営に生かしていけばいいでしょう。そのためには、不動産会社との良好な関係を構築しておくことが大切です。
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