「不動産投資ローン」を知ろう

紙幣と計算機、建物による「不動産投資ローン」のイメージ
不動産投資物件を購入する場合、一般的な自己居住用の住宅ローンは利用できないため、不動産投資ローンを組むことになります。

「不動産投資ローン」とは

一般的な住宅ローン(以下住宅ローン)と「不動産投資ローン」の違いは、その目的にあります。住宅ローンの場合は、自分が住むための家の購入資金としてローンを組みますが、不動産投資ローンは、第三者に貸すなどして事業収入を得るための物件を買う資金として、ローンを組みます。つまり不動産投資ローンの場合、ローン契約者は物件から収益を得る事業者という立場になるわけです。

 

一般的に、不動産投資ローンを含む事業者に対するローンは、住宅ローンに比べると審査が厳しく借りにくくなっています。その辺りを含めて、不動産投資ローンについて具体的に見ていきましょう。

 

 

【不動産投資ローンと住宅ローンの違い】

不動産投資ローンの特徴は、その「事業性」に融資するという点にあります。ですから、契約者の「属性(年齢・勤務先・年収など)」や「個人信用」が審査の中心である住宅ローンとは違い、事業として成功する見込みはあるのかが、審査の最大の可否規準になります。つまり、事業として「収益性」があるのか、「継続性」が見込めるのかということが重要なのです。なぜなら、不動産投資ローンの返済原資は、投資対象の不動産から得られる事業収益だからです。金融機関が事業の成否予測を厳しく見るのは当然のことと言えます。

 

投資物件の収益性が高ければ、不動産投資ローンの審査に通りやすくなるということを踏まえて考えると、金融機関に事業収益・継続を示しやすく、理解してもらいやすい物件として「オーナーチェンジ物件」が挙げられます。既に入居者がいる賃貸物件を引き継いで経営すればいいわけですから、現状で入居率が高く、資金計画などに問題がないことを事業計画として提示できれば、比較的ローン審査が通りやすくなると考えられます。

 

【どのくらい借り入れできるのか】

会社員の場合、住宅ローンの借入金額は、おおむね年収の5倍~6倍程度が上限となるのが一般的です(例:税込年収550万円で借入額2,750万円)。不動産投資ローンでは諸条件にもよりますが、事業計画が整っている場合は住宅ローン以上の金額が融資される可能性が高くなります。

 

ただし、その際は事業性が評価されることと合わせて、事業主個人の属性・信用も見て総合的に判断されることになります。最も重要なのは、投資事業の収益性・継続性ということに変わりはありませんが、会社員の副業として投資を行うならば、もしも本業の給与収入が減少したり不安定な状態に陥ったりすると、おそらく投資事業の収益分(家賃収入など)から生活費などを補填することになるでしょう。

 

金融機関側は、それを返済滞納リスクとして捉えるので、ローン契約者である事業主の属性についても決して軽視はしません。ですから住宅ローンと同様に信用情報にも気を配り、他の債権についてはきれいにしておく必要がありますし、勤務先や勤務形態についても安定性が高い方が有利であることに変わりはありません。

不動産投資ローンのメリット・デメリット

建物模型と紙幣による、不動産投資ローンのメリット・デメリット

【不動産投資ローンのメリット】

不動産投資ローンの大きなメリットとして「レバレッジ効果」があります。レバレッジとは「梃(てこ)」または「梃の原理」という意味で、投資用語としては、少しの作用(投資)で本来想定される以上の結果(利益)が得られることを表します。

 

例えば、自己資金が1,000万円あるとします。自己資金で購入金額1,000万円・年間収益120万円(月額収入10万円)の賃貸事業用物件を買うと、利回りは12%です(諸費用・税額などは除外した単純計算のみ)。

 

一方、購入金額3,000万円の賃貸事業用物件を買うとします。購入に際しては自己資金1,000万円を使い、残り2,000万円は金融機関からの融資とします。利回りは上記と同じ12%だとすると、年間収益は360万円(月額収入30万円)となります。ただし、融資には利息がかかるので、仮に金利4%で初年度の金利支払い分を2,000万円×4%=80万円とします。360万円から80万円を差し引くと、年間収益は280万円に変わります。

 

つまり、自己資金1,000万円は同じなのに、融資を得ることで年間収益が160万円増えたわけです(280万円-120万円=160万円)。これが「レバレッジ効果」と言われるものです。

 

実際には毎月のローン返済がありますし、実質の収入額なども違ってくるので、これはあくまでもレバレッジを理解するための簡略化した説明と考えてください。ただ、ローン完済後はさらに効果が高まるということも言えます。

 

【不動産投資ローンのデメリット】

不動産投資ローンを組むことでのデメリットは、常に返済滞納リスクを負うということでしょう。空室状態の長期化や市場動向による賃料値下げによる収益の低下は、ローン返済の原資が目減りするということですから、返済滞納に直結してしまいます。そうなるとレバレッジ効果が薄れるのはもちろんのこと、最悪の場合、投資物件を処分した上で事業撤退という可能性が出てきます。

 

もともと不動産投資ローンは、住宅ローンに比べて金利設定が高めになっていますから(これもデメリットの一つと言えます)、物件の利回り・実際の月間収入額と借入金額・返済月額を見極めて無理のない資金計画を立てることが大切です。

ローン審査を通過しやすくするには

ローン審査には「信用」が欠かせません。融資をする金融機関は基本的にビジネスですから、「最後まで返済が見込める」事業者にしかお金を出しません。つまり、返済に対する不安要素があると、それだけローンの審査は通りにくくなるということです。

 

例えば、クレジットカードを何種類も保有していたり、他に大きな損失を被る可能性がある副業をしていたりといった要素があれば、「信用」という点ではマイナスに作用してしまいます。クレジットカードは解約して枚数を減らしたり、限度額を引き下げたりという対策をしておきましょう。不安定な副業ならばきっぱりやめて、返済に対するリスクはできるだけ排除しておきましょう。

 

一方で、しっかりとした事業計画を提示して、ローンの返済に対しても計画性があると見なされれば、審査も通りやすくなります。例えば、資産価値や収益性の高い物件をしっかり選び、データに基づいた賃貸経営の展望、収支予測を練り上げれば、融資側の評価が得やすくなるでしょう。

 

ローン審査も、最終判断は結局「人」です。自分の手元にあるものが、融資する側にとって安心材料になるのか、逆に不安要素になるのかを客観的に判断した上で、不動産投資ローンを検討しましょう。

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